今日のニューウェーブ 第18回
安全地帯Ⅲ〜抱きしめたい
/ 安全地帯
(1984)
玉置浩二率いるバンド、安全地帯は1973年結成。
彼らはインディーズ時代、バンド自らつくった地元、北海道のスタジオで連日7〜8時間、練習や楽曲制作とストイックな活動をしていました。
そこを訪ねたのが井上陽水。
1981年、ツアーのバックバンドに抜擢され、晴れて上京しメジャーデビューへ。
このアルバムは1984年の3枚目。
元々、自分たちの力でやりたい放題に音楽をやっていただけに、根底は強固でディープなロックサウンドですが、親しみやすい、綺麗なメロディと歌詞なのでとても聴きやすい。
というのも、彼らにロックだけでなく歌謡曲やポップスにも目を向けるようにとアドバイスしたのは他でもない井上陽水。
超ディープな音楽ルーツをもちつつ、音楽業界で成功している陽水からのアドバイスだったからこそ、彼らの耳には届いたのではないでしょうか。
今日のニューウェーブ 第17回
Ghost in the Machine / The Police
(1981)
ドラムのスチュアート・コープランド、ギターのアンディ・サマーズ、ベースボーカルのスティングが揃った時点で、ザ・ポリスは奇跡と言える。
たぶん、3人ともプレイヤーとしては個性的な部類に入る人達だけれど、この3人が絶妙なバランスでポリスというパッケージの中にはめ込まれているからこそ、ポップでありつつもトゲを失わない、誰にもマネできない音楽になったんだと思います。
彼らは元々、新人なパンクバンドとしてデビューし、あっという間にニューウェーブを代表する世界的なバンドとなりました。
ニューウェーブはパンクから生まれた音楽と散々書いてきましたが、ポリスに関して言えば、パンクは彼らの生み出す音楽のスパイスのうちの1つでしかない。
おそらく、もともと別々のバンドで別々の音楽をやっていた3人が集まっているポリスにとってはジャンルなんて瑣末なものなのだと思います。
このアルバムは、世界的な評価を前作で得てからリリースされた4枚目のスタジオアルバム。
3枚目が傑作となってしまっただけに期待も高く、焦りを感じざるを得ないタイミングで、全くブレない3人の落ち着きと気概が感じられます。
一番好きな曲!
今日のニューウェーブ 第16回
Life’s Too Good / The Sugarcubes
(1988)
ビョークが在籍していたことでも有名な、アイスランド出身のバンド。
(しかも奇声をあげたり、たまにラッパを吹くおじさん)
ニューウェーブと呼ぶには少し時代が後になりますが、透き通るコーラス・エフェクトや少しイカれた世界観はニューウェーブさながら。
この曲のサビでのビョークのシャウトを聴けば、その後世界に与える衝撃も頷けると思います。
歌詞はどう考えても少女性愛の話で、
彼女はポケットにクモを入れていて…
と気持ち悪さと美しさが同居するビョークの世界観はもう出来上がっていたことが分かります。
正直、この曲以外、ビョークを楽しもうと思ったらヘンテコなインストの部分とか、ビョークに割って入ってくるおじさんとか、邪魔で仕方ないと思いますが、彼女を抜きにしてニューウェーブバンドとして見てもすごくかっこいいバンド。
今日のニューウェーブ 第15回
Undercover / The Rolling Stones
(1983)
ローリングストーンズは60年代から活動し、80年代には既に大御所。
今まで書いてきたようなチャキチャキのニューウェーブバンドではありません。
しかしながら、人気絶頂の中で、彼らにとって新機軸である電子ドラムや過激なエフェクト処理を大きく取り入れたこのアルバムは、本人達の自己評価こそ低いらしいですが間違いなくニューウェーブの名盤。
これまで築き上げてきた「ストーンズらしさ」はそのままに、やすやすとニューウェーブの音楽に接近できてしまう凄みはローリングストーンズがこれほど長いあいだ愛される理由のひとつだと思います。
この時、ミック・ジャガーとキース・リチャーズの中は最悪で、顔も合わせないほどだったらしい。
ただ、悲しいことにフロントマンが2人いるバンドで、2人の仲が微妙な時のアルバムは大体いい。
わざと仲悪くしようかな…
今日のニューウェーブ 第14回
Talk Talk Talk / The Psychedelic Furs
(1981)
今日は1977年結成のロンドンのバンド、サイケデリックファーズのセカンドアルバム。
日本では異様に知名度が低いですが、当時イギリスだけでなく色々な国でヒットを飛ばしたバンドです。
プロデューサーはこの時代の音作りを語る上で欠かせない人物、スティーブリリーホワイト。
彼が手がけたニューウェーブのアルバムは枚挙に暇がないです。
このバンドは時期によってテイストが結構違いますが1〜2枚目はすごくロックで、その中でも僕が好きなのはこの曲。
ドッドッドッド、ドッドッドッドと一定のドラムに、パンクらしいディストーションギターとザ・ニューウェーブなサックスが絡みます。
この冷たさと熱気が同居する感じはポストパンクでしか味わえない…!
今日のニューウェーブ 第13回
Head Over Heels / Cocteau Twins
(1983)
シューゲイザー・ロックの古典ともいうべきアルバム。
(シューゲイザーについては過去記事「シューゲイザーのレシピ」参照)
コクトー・ツインズの音がシューゲイザー・サウンドの原点というのはよく言われる話だけど、コクトー・ツインズのどのアルバムかと言われれば間違いなくこのセカンドアルバム。
というのも、このアルバムからベーシストがいなくなったことがたぶん大きい。
ベーシスト的観点がない(曲にベースの音が入ってない訳じゃないです。)ということは、ベースの役割である「グルーヴの作成」や「コードの境目の明確化」が機能しないことになる。
つまり、「ボーーーーファーー」っていう音と「ポクポクポクポク…」っていう2つだけが鳴っている。
そうして浮遊感や陶酔感がより強調されたのがシューゲイザー・ロックの端緒なのかも。
お経もそう。
たぶん、シューゲイザーは元々ベース軽視の音楽で、ベースはギターに音の厚みを加えるものとしてしか考えられてないんじゃなかろうか。
全国のシューゲイザーバンドのベーシストさん申し訳ない。
たぶん1枚目だけだったら、正直BauhauseやEcho & the Bunnymenの初期とそこまで変わらないネオ・サイケデリックバンドなんだろうけど、シューゲイザーの成立、 という視点で考えれば、ベースの扱われ方がいわばギタリスト思考に変わったことがたぶん重要。
なんならこのバンドには元々ドラムもいないので、ビートが冷徹でヒップホップっぽい。
時代的にはその影響もあり得なくはないのかも…
いかんせん作風が耽美なのでちょっと聴きにくいかもしれませんが、僕が思うにシューゲイザー史からして超重要なアルバム。
今日のニューウェーブ 第12回
The Curse of The Higsons
/ The Higsons
(1984)
思うにニューウェーブの音楽は「暗くてかっこいいやつ」と「アホでかっこいいやつ」の2つに分けられます。
ファンクに影響を受けたニューウェーブで言えば、昨日紹介したA Certain Ratioが「暗くてかっこいいやつ」で、これは後者。
どちらもアメリカのファンク・ロックを材料にしているのに、こうも違う料理ができるのかとびっくりしますが、もしかすると、ニューウェーブの面白味はそういうところなのかもしれません。
このアルバム、そもそもタイトルが、「ヒグソンズの呪い」なのに、聴くと普通に明るい。
一曲目から「うおーーどりゃーー」と無茶苦茶なファンクで、全然ついていけず笑っていると、
「ん?、かっこいい…かも…」
という気持ちになってくる。
「面白い」と「かっこいい」は紙一重。
面白かっこいいぜ!ヒグソンズ。