今日のニューウェーブ 第19回
This Is What You Want... This Is What You Get / Public Image Ltd
(1984)
思えばこのアルバムは人生で初めて聴いたニューウェーブのアルバム。
中学2年の時にセックス・ピストルズのパンクロックに衝撃を受けたあと、僕は、ラモーンズやクラッシュ、ダムドなど他の有名なパンクバンドを聴かずに、セックス・ピストルズのボーカルであるジョン・ライドンがその後に始めたバンドと聞いてこのパブリック・イメージ・リミテッドのアルバムを渋谷のタワーレコードで買った。
しかもこの盤はよりによって4枚目のスタジオアルバム。
どうしてこれを借りたのかはよく思い出せないけど、たぶんジャケットにジョン・ライドンの顔が載ってたからだと思う。
渋谷から群馬の家に帰って、さぞかしカッコイイんだろうと思いコンポにCDを突っ込み、再生ボタン押すと、スピーカーから流れてきたのは尖ったセックス・ピストルズの音とは程遠いまあるくてガッチリとしたノリのいいビートだった。
割って入ってくるのは「ンアーーーーーん」、「イアーーーーーん」と粘っこい歌い方のジョン・ライドン。
2曲目…3曲目…4曲目…
「全然カッコ良くねえ…」
最初、買うCDを間違えたと思ったけど、アルバムジャケットはどう考えてもジョン・ライドンの顔だから間違いない。
ふざけてるとしか思えないジョン・ライドンの声で
This Is What You Want...
(これが君の欲しいもの)
This Is What You Get...
(これが君の手に入れたもの)
と叫んでいて思わず床に叩きつけそうになった。
これが俺の欲しいもの??
これが俺の手に入れたもの???
そんな理解不能だったこのアルバムも、今こうして改めて聴くと素直にカッコいいと思える。
こういうのは本当に音楽だけだと思う。
ニンジンを食べられない子どもが大人になってからニンジン大好物になることがあり得る。
クラス全員ニンジンが嫌いで、自分だけニンジン大好物ということも。
食べられなかった最初のニンジン。
大切なアルバム。