今日のニューウェーブ 第13回
Head Over Heels / Cocteau Twins
(1983)
シューゲイザー・ロックの古典ともいうべきアルバム。
(シューゲイザーについては過去記事「シューゲイザーのレシピ」参照)
コクトー・ツインズの音がシューゲイザー・サウンドの原点というのはよく言われる話だけど、コクトー・ツインズのどのアルバムかと言われれば間違いなくこのセカンドアルバム。
というのも、このアルバムからベーシストがいなくなったことがたぶん大きい。
ベーシスト的観点がない(曲にベースの音が入ってない訳じゃないです。)ということは、ベースの役割である「グルーヴの作成」や「コードの境目の明確化」が機能しないことになる。
つまり、「ボーーーーファーー」っていう音と「ポクポクポクポク…」っていう2つだけが鳴っている。
そうして浮遊感や陶酔感がより強調されたのがシューゲイザー・ロックの端緒なのかも。
お経もそう。
たぶん、シューゲイザーは元々ベース軽視の音楽で、ベースはギターに音の厚みを加えるものとしてしか考えられてないんじゃなかろうか。
全国のシューゲイザーバンドのベーシストさん申し訳ない。
たぶん1枚目だけだったら、正直BauhauseやEcho & the Bunnymenの初期とそこまで変わらないネオ・サイケデリックバンドなんだろうけど、シューゲイザーの成立、 という視点で考えれば、ベースの扱われ方がいわばギタリスト思考に変わったことがたぶん重要。
なんならこのバンドには元々ドラムもいないので、ビートが冷徹でヒップホップっぽい。
時代的にはその影響もあり得なくはないのかも…
いかんせん作風が耽美なのでちょっと聴きにくいかもしれませんが、僕が思うにシューゲイザー史からして超重要なアルバム。
今日のニューウェーブ 第12回
The Curse of The Higsons
/ The Higsons
(1984)
思うにニューウェーブの音楽は「暗くてかっこいいやつ」と「アホでかっこいいやつ」の2つに分けられます。
ファンクに影響を受けたニューウェーブで言えば、昨日紹介したA Certain Ratioが「暗くてかっこいいやつ」で、これは後者。
どちらもアメリカのファンク・ロックを材料にしているのに、こうも違う料理ができるのかとびっくりしますが、もしかすると、ニューウェーブの面白味はそういうところなのかもしれません。
このアルバム、そもそもタイトルが、「ヒグソンズの呪い」なのに、聴くと普通に明るい。
一曲目から「うおーーどりゃーー」と無茶苦茶なファンクで、全然ついていけず笑っていると、
「ん?、かっこいい…かも…」
という気持ちになってくる。
「面白い」と「かっこいい」は紙一重。
面白かっこいいぜ!ヒグソンズ。
今日のニューウェーブ 第11回
I’d Like To See You Again
/ A Certain Ratio
(1982)
イギリスはマンチェスターのダークなファンクバンド、ア・サーテイン・レイシオの4枚目。
このバンドはジョイ・ディヴィジョンと同時期に伝説のライブハウスであるハシエンダで活動していたということで初期はとても陰鬱。
アルバムを追うごとに洗練され、よりポップで本格派なファンクバンドとへと変貌していきます。
初期のハチャメチャな荒削りファンクがとりだたされることの方が多いのですが、中期のこのアルバムもすごくかっこいいです。
シンセサイザーが多用された、ニューウェーブとファンクのクロスオーバー。
特にZAZEN BOYSが好きな人はかなり親近感を持って聴けると思うのでオススメしたい1枚。
今日のニューウェーブ 第10回
Hyaena / Siouxsie & The Banshees
(1984)
セックス・ピストルズのグルーピーでもあったスージー・スーを中心としたスージーアンドザバンシーンズ、通称スジバンは初期の攻撃的なサウンドや彼女のド派手なルックスから色物バンドとして見られてしまいがちですが、順を追ってアルバムを聴いていくととても音楽性の高いアカデミックなバンドであることが分かります。
特にこの6枚目の「ハイエナ」はエグい音楽性とポップセンスのベストミックス。
The Cureのロバート・スミスがギタリスト兼コンポーザーとして参加しています。
(1曲目のイントロはMr.Childrenのアルバム「It’s a wonderful world」表題曲のインスト曲の元ネタじゃないかと僕は思っているのですが…)
特にオススメしたいのはビートルズの”Dear Prudence”のカバー。
彼女らの懐の深さを計り知ることができます。
リバーブの深い、耽美的なボーカルに淡々と打ち鳴らされるドラム、掻き鳴らすギター。
今日のニューウェーブ 第9回
Sound-on-Sound
/ Bill Nelson’s Red Noise
(1979)
きましたニューウェーブの超(隠れ)名盤。
70年代前半から活動したグラムロックバンド、Be-Bop Deluxeのボーカルであるビル・ネルソンが解散後に開始したソロプロジェクト第1作。
知名度は低いですが、初期ニューウェーブの金字塔的アルバムです。
実際にバンドとしては活動していない宅録アルバムとは思えないバンド感、ライブ感、ロック感。
パンクの初期衝動に突拍子も無いシンセサイザーやらラッパやら奇声やらごちゃ混ぜにして鳴らされるポップサウンドはこれぞニューウェーブ。
ロボットガシャーンガシャーン、俺に触るんじゃない電気ビリビリだー!
杉森さんもお気に入りの一枚。
ネルソンさんのこの後の作品も僕は大好きですが1番パンクなのはやはりこれ。
ニューウェーブ好きなら絶対聴いて欲しい!
今日のニューウェーブ 第8回
Solid Gold / Gang Of Four
(1981)
カミソリギターの名手、アンディ・ギルを擁するギャング・オブ・フォーのセカンドアルバム。
前作からのブラックミュージックの要素がさらに深化され、よりダークで肉体的なサウンドに。
音の隙間も多く、頭から最後まで異様な緊張感に包まれています。
確か古着屋さんでたまたま流れていて、店員さんに教えてもらったバンド。
僕はこのアルバムを聴いてからずっと、たぶん心のどこかでこのギターの音をずっと出そうとしている気がします。
アンディ・ギルのギターのすごみは、もはや「弾いてる」と言えるのかすら危ういくらい、どこまでも破壊的なところで、1910年代の芸術運動、ダダイスムのような破壊衝動がプンプンします。
「戦争」をテーマにギターを弾いて下さいと言われて、1番生々しく表現できるのはアンディ・ギルなんじゃないか。
サークル時代に川村さんがドラム、杉森さんがベース、僕がギターでコピーした思い出。
水元は当時仲良くなかったので…
今日のニューウェーブ 第7回
Boy / U2
(1980)
今や世界を股にかけるロックバンド、U2のデビューアルバムを今日は紹介します。
アイルランド出身である彼らは母国で人気を集めるなか、敏腕音楽プロデューサー、スティーブ・リリーホワイトがサウンドミックスを手掛けたこのアルバムで世界進出するきっかけを掴みました。
U2の持ち味はボーカルであるボノの人間性や社会派の歌詞だけでなく、ギタリストであるエッジのロマンチックで力強いギターワークにもあります。
その凄みはこのデビューアルバムの時点ですでに最高潮。
ニューウェーブの時代にあって、いくら最新鋭のサウンドでも、このアルバムは全体を通してすごく人間的で、切なさと力強さを併せ持った人間の魅力に溢れています。
そしてこの後も最新技術をいち早く取り入れた作品を生み出し、超大規模なライブを重ねていくU2ですが、それはどんな物事にも飲み込まれない強靭な精神(思想)と肉体(サウンド)を持っていたから。
その確固たる意志を感じ取ることができる1枚。