今日のニューウェーブ 第25回
Legendary Hearts / Lou Reed
(1983)
昨日は8/19バイクの日!
ということで今日はフルフェイスのヘルメットがジャケットのこのアルバムを。
オルタナティブ・ロック、ひいてはパンク・ロックの源流とも言うべきニューヨークのロックバンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのフロントマンであるルー・リードのソロ12作目です。
かなり多作なルー・リード。
どれから聴けばいいのか分かりませんでしたが、この時期に参加していたギタリストであるロバート・クアインがきっかけで僕はこれを最初に聴きました。
ロバート・クアインは元々、熱烈なヴェルヴェット・アンダーグラウンドファンであり、パンクバンド、テレビジョンのリチャード・ヘル率いるボイドイズのギタリスト。
一見普通のように見えてどこかおかしなギターを弾く人ですが、なんとパンクロッカーでありながら弁護士免許を持つ才人です。
60年代から活躍するルー・リードは1980年に結婚し、妻と隠遁生活を送っていたのですが、彼の勧めもあり、名盤「ブルーマスク」で復帰を果たしました。
そしてこのアルバムは復帰2作目。
前作が有名なだけにあまり注目はされていないようですが、こちらの方が僕は好きです。
シンプルな編成で演奏されるシンプルなロックンロールから醸し出される大人の香り。
パンクロックの精神の生みの親でありながら、自らもパンクの影響を受けて再びハートに熱を入れるルー・リードに痺れる1枚です。
今日のニューウェーブ 第24回
Swoon / Prefab Sprout
(1984)
僕含め、音楽に親でも殺されたのか、自分でも一体何がしたいのかよく分からないまま血まなこになって古いアルバムを聴き漁っているいわば音楽オタクの人達に共通するのは、救いようのないほど酷い「あまのじゃく」だということ。
「みんなが好きな音楽以外に、もっと良い音楽がきっとあるはずだ!」と広大な海に一人で船を出した結果、誰も知らないところで勝手に溺れそうになっている孤独な海賊たち。
要するに学生時代に友達がいなかった人たち。
音楽の話は大好きですが、悲しいかな、あまのじゃくなだけに同じバンドを好きな人を見つけてもその人達とあまりつるもうとしません。
内心は大興奮しながら「ほーん、それ好きなんですね、僕も。」とか言ってみたり。なんてダサいんでしょう。
その上、「ここいいなぁ」とか「ここあんまりだなぁ」なんて考えながらテキパキ聴くことが習慣化するあまり、初めて聴く音楽にはテンションは上がりつつも、その良し悪しに関してはかなり冷静で、実際のところ、「おお!いい!」と思っても「さぁ他の良いバンドを探そう!」と興味が移ってしまうので、ひとつのバンドに心酔することがあまりない。
そんな悲しき海賊たちの多くが長い航海の末に辿り着き、ハマって抜けられなくなってしまう「沼バンド」がいくつかあり、そのひとつがこのプリファブ・スプラウトです。
この1984年のデビューアルバム以降、地道なリリースを続ける彼らは、最高のソングライターの1人とも評されるパディー・マクアルーン率いるイギリスのバンド。
このバンドの前では、あまのじゃくたちもみんな手を取り合い、固い握手をし、マイムマイムを踊ります。
プリファブ・スプラウトが音楽オタクを虜にする理由、
それは、曲ごとに色んなジャンルの音楽を聴かせてくれるからなのか…
コードやメロディや構成が凝っていてなかなか飽きがこないからなのか…
いやなにより、たぶんそれは…
パディー・マクアルーンさんも音楽オタクだから…
こちらからは以上です。
今日のニューウェーブ 第23回
Walk Across The Rooftops
/ The Blue Nile
(1984)
今日はクールで大人なニューウェーブ。
スコットランドの謎のバンド、ブルーナイルのデビューアルバムです。
このアルバムは知る人ぞ知る名盤だとしばしば言われますが、アルバムとして完成度が高いのに全く注目されていないという意味では本当にそうだと思います。
独特な空気感で、これまで書いてきたようなチャキチャキでヒップなニューウェーブとは打って変わって、心を落ち着かせてくれるマイナスイオンのようなアルバム。
ゆったりと、どっぷりと、映画を観るような感覚で聴いて欲しいです。
そして音が本当に良い。
発売から34年経っているのに、今聴いても古臭さを全く感じません。
むしろ、まだこの先の未来の音楽のよう。
オカルト話じゃないですが、不思議なことに、このアルバムを流すと周りがそれまでよりも静かになったように感じる。
静かな空間に鳴るブーミーなベース音。この蒸し暑さにうだる心も温度を下げていくようです。
今日のニューウェーブ 第22回
99 Luftballons / Nena
(1984)
おそらく誰しも聴いたことがあるこの歌もニューウェーブ真っ只中の1984年発売でした。
“99Luftballons” (和訳すると99の赤い風船) はドイツ語詞にも関わらず全世界で大ヒットした曲です。
世界中のヒットチャートで1位を獲得したこの曲があまりに有名なので、一発屋のバンドと思われても仕方ないですが、このバンド、ネーナを始めドイツにはNeue Deutsche Welle(ノイエ・ドイチェ・ヴェレ)というパンク・ニューウェーブのドイツ版というべき流れがありました。
(このMVで使われているシンセサイザーも御多分に漏れず名機、”Prophet-5”ですね。)
当時のドイツはまだベルリンの壁が崩壊する前。政治的なメッセージを歌うパンクロックの精神性を受け継いだこの曲は反戦歌です。
風船は平和の象徴であり、なんの罪もなく日々を暮らす人々のこと。
赤は血の赤、警告の赤、はたまた共産主義の赤でしょうか。
夏の空、地平線の向こうにゆらゆらと飛んでいく99個の赤い風船を戦闘機が敵と間違えて撃つ、戦争なんてそんなくだらないもの、という強いメッセージにも関わらずとてもかわいらしく歌っています。
この時、僕はまだ生まれていませんが、ボーカル、Nenaの優しい歌声と、この印象的な歌詞は世界中の人達をハッとさせたことでしょう。
99というのは1999年、つまり未来の世界はどうなっているだろう、という意味合いもあったのだと思います。
未だ第二次世界大戦の尾を引いていたドイツだったからこそ生まれた歌だったのかもしれません。
今日のニューウェーブ 第21回
Candy-O / The Cars
(1979)
シンセサイザーを大胆に取り入れたポップなサウンドで数々のヒットを飛ばしました。
当時はかなり売れていたはずなのに、今の日本では驚くほど知名度がないバンドの1つ…。
自由や夢の象徴として「車」を題材にした歌詞や曲名は数あれど、それをそのままバンド名にしちゃうところ、最高に好き。
左利きのギタリスト、エリオット・イーストンのロックンロールなギターリフに絡むシンセサイザーが何よりの持ち味です。
キーボーディストであるグレッグ・ハークスが使用するシンセサイザーの中でも、特に僕が好きなのは、ちょうどこの頃に発売されたSequential Circuits社の”Prophet-5”。
このブログのトップ画像でもあります。
野太く、重厚な、存在感のある音でYMOをはじめとして、過去記事でも書いたJAPANやPublic Image Ltdなど、多くのニューウェーブバンドに愛された名機です。
その中でも1番可愛く、ポップに使用したのはこのバンドじゃないでしょうか。
ただこの頃は発売して間もないのでこのアルバムではまだ使われてないのかも?
ロックにポップスに自由自在なバンドですが、このセカンドアルバムが僕の中では1番いいバランスです。
今日のニューウェーブ 第20回
NORMAL / 一風堂
(1980)
邦楽のアルバムジャケットで1番好きかもしれない一枚。
三角ってなんておしゃれ。
このアルバムには入っていませんが、皆さんご存知、SHAZNAの「すみれSeptember Love」(中高生は知らないのかな…)はこの一風堂の楽曲のカバーです。
一風堂はこの後、風景画のような、しっとりとした音楽志向に変わっていきますが、このアルバムはとてもパンク魂あふれるファーストアルバム。
ギターボーカル、土屋昌巳氏はイギリスのニューウェーブバンド、JAPANのジャパンツアーのサポートギタリストも務めた日本が誇るギタリストであり、また最近ではTHE NOVEMBERSのアルバムプロデュースもされています。
キレッキレのエレキギターにヘンテコなシンセサイザーとシャウトはいかにも初期ニューウェーブ。
YouTubeにはほとんど音源がないのですが、Apple Musicにはちゃんと入っています。
そういえば少し前に下北の飲み屋でスマブラ対決したロサンゼルスからの留学生の女の子もニューウェーブ好きで、土屋昌巳氏のレコードを買ってました。
「Masami Tsuchiya分かる?」って言うから耳を疑ったけど…
今日のニューウェーブ 第19回
This Is What You Want... This Is What You Get / Public Image Ltd
(1984)
思えばこのアルバムは人生で初めて聴いたニューウェーブのアルバム。
中学2年の時にセックス・ピストルズのパンクロックに衝撃を受けたあと、僕は、ラモーンズやクラッシュ、ダムドなど他の有名なパンクバンドを聴かずに、セックス・ピストルズのボーカルであるジョン・ライドンがその後に始めたバンドと聞いてこのパブリック・イメージ・リミテッドのアルバムを渋谷のタワーレコードで買った。
しかもこの盤はよりによって4枚目のスタジオアルバム。
どうしてこれを借りたのかはよく思い出せないけど、たぶんジャケットにジョン・ライドンの顔が載ってたからだと思う。
渋谷から群馬の家に帰って、さぞかしカッコイイんだろうと思いコンポにCDを突っ込み、再生ボタン押すと、スピーカーから流れてきたのは尖ったセックス・ピストルズの音とは程遠いまあるくてガッチリとしたノリのいいビートだった。
割って入ってくるのは「ンアーーーーーん」、「イアーーーーーん」と粘っこい歌い方のジョン・ライドン。
2曲目…3曲目…4曲目…
「全然カッコ良くねえ…」
最初、買うCDを間違えたと思ったけど、アルバムジャケットはどう考えてもジョン・ライドンの顔だから間違いない。
ふざけてるとしか思えないジョン・ライドンの声で
This Is What You Want...
(これが君の欲しいもの)
This Is What You Get...
(これが君の手に入れたもの)
と叫んでいて思わず床に叩きつけそうになった。
これが俺の欲しいもの??
これが俺の手に入れたもの???
そんな理解不能だったこのアルバムも、今こうして改めて聴くと素直にカッコいいと思える。
こういうのは本当に音楽だけだと思う。
ニンジンを食べられない子どもが大人になってからニンジン大好物になることがあり得る。
クラス全員ニンジンが嫌いで、自分だけニンジン大好物ということも。
食べられなかった最初のニンジン。
大切なアルバム。